* ピュア−パッシブダイナミック戦略 *

Pure Passive Dymanic Strategy

パッシブ戦略

パッシブ戦略は将来の価格の予測を行わずに誰でも簡単に導入できる投資戦略である。例えば、日経225に連動したようなインデックス運用はパッシブ戦略である。トピックスをインデックスとした運用もまたパッシブ戦略である。トピックスのほうがより株式運用全体の市場平均に近いという意味でパッシブに近いといえる。ただし、日経225もトピックスも実は株式運用全体の平均というには非常に物足りない。なぜなら株式には未上場株もあれば店頭株もあるからである。ただし、簡単で誰でも導入可能で、投資戦略に将来の予想が入っていないということでパッシブ戦略と呼べる。

さて、ここでパッシブという意味をより厳密に考えてみたい。多くの株式を保持することで市場平均を得る戦略というのは市場の均衡価格で株式を買い、その株式を市場の均衡価格で売ることに近い。多くの株式を持つことは分散の効果により、その時たまたま均衡価格から外れている個別株の影響を極力避けたいからである。そのために個別株が常に均衡価格で取引されているのであれば、その株式を保持することでパッシブ戦略を実現することができる。どのようなタイミングで売り買いしても均衡価格で取引できるので合理的な収益が得られ、売買のタイミングを一切考える必要が無くなる。

一般に、株式の価格が常に均衡しているためには効率的な市場が必要である。市場情報がさまざまに独自かつ合理的に行動する多数の市場参加者により分析され売買されれば、その情報は速やかに価格に反映され、その価格は合理的な価格になる。その情報を分析した後で価格の上昇を予想し市場にその株式を買いに行ってもその株式はすでに上昇してしまっているため、合理的な市場では超過収益を得ることはできない。つまり株価の動きの予想は不可能になり、そのような株価の動きはランダムウォークに従うと考えられる。簡単にいうとそれは正規分布になるのである。

パッシブダイナミック戦略

将来の予測をせずにオプションを機械的に購入していく戦略もパッシブ戦略に分類される。オプションの価格は理論的には売り手と買い手が無リスク金利を得られるように決定されるので市場の均衡価格で取引が行われたと考えることができるのである。オプションの複製もまったく同じ原理である。驚くことにオプション複製戦略をアクティブ戦略と考えている人は少なくない。それはポジション調整を頻繁に行うからである。ブラック-ショールズ(BS)モデルは効率的な市場を前提として成り立っているのでそのデルタを用いてオプション複製戦略を実行すると最終的にオプションを複製して投資家は無リスク金利を手に入れることができる。

パッシブ運用の実際

先ほどの株式運用であるが厳密にいうとパッシブ運用にはならない。なぜならインデックスの値動きは正規分布ではなく裾野の厚いファットテイルになっているからである。これは個別株の動きが正規分布ではなく、かつそれぞれの株式が独立に動いているのではなく相互作用を持っているからであると考えられる。もしそれぞれの株式が独立に動いているのであれば分散の効果によりインデックスの値動きは正規分布になると考えられる。このような意味でインデックス運用は厳密にはパッシブ運用ではなくなる。インデックス運用でも買うタイミングと売るタイミングが異なれば、それぞれの値動きの程度により均衡価格を基にした利回りが得られず、かつそれは売買のタイミングにより均衡価格から得られる収益からずれるという意味で大きな差が出る。つまり、売買のタイミングを選択すれば均衡価格から得られるはずの収益より常によい戦略を得る可能性があるということであり、この事実は超過収益を得ることができるというアクティブ戦略を指示することになる。さらに議論を深めれば、インデックス運用であっても買うタイミングにより運用の均衡価格からの乖離という基準で図る成果が異なるのであれば買うタイミングを考慮せざるを得なくなる。または、うまいタイミングで買おうという意図が投資家に無くても、運用成果は理論から乖離する。つまり、インデックス運用はパッシブ運用ではなくなり、アクティブ運用になるのである。

残念ながら、多くの株式をポートフォリオに加えることでは分散の効果を高くすることはできない。株式の数を増やしたとしてもあるレベル以上に分散の効果は高くならないのである。そこには限界がある。それを超えるためには異なる資産クラスでポートフォリオを構築することが必要になり、十分に分散の効果を得るためにはグローバルポートフォリオの構築が必要になるのである。ただし、だからといって決して理想的なパッシブ運用ができるわけではない。

もちろん、一般にパッシブ運用というときにはこのように厳密には考えられてはいない。そのためインデックスを買い持ちする運用はたとえ均衡価格を基にした収益が得られないとしてもパッシブ運用である。

ここで、インデックスに含まれる株式をすべて買いそれを保持する戦略であれば、大きな厳密性は必要ない。ところがたとえば統計の知識を利用して少ない株式でトピックスのインデックスに連動する運用を実現しようとすると実は大きな問題が生じる。モデルを用いた運用ではパッシブ運用という場合は正規分布を基にしたモデルを使うからである。正規分布を使う理由には数学的に解を得るのが用意であるということも考えられるが、それ以上の意味をパッシブ運用では持っている。

難しい知識が無くても値動きが正規分布を前提としたモデルを用いて実際の値動きが正規分布でない市場で運用すれば、大きな誤差が生じることは理解できる。実際の値動きがファットレイルであるので、大きな負と正の値動きが正規分布よりも多く生じることになる。そのために、運用成果が正規分布を前提として考えた場合よりもよい場合と悪い場合が極端に多く出るのである。かつ、実際の運用結果を調査してみるとこの癖の出方には長い継続性があるのである。そのために正しいことをしていたとしても運用成績が悪いと考えられてしまう場合が出てくる。

現状、たとえば、パッシブ運用でインデックスよりもよい成績になるとそれは何か運用がうまくいったと考えられ、インデックスよりも低い成績では運用に何か間違いがあるのではないかと考えられてしまう。このような状況も当然起こりえるが、正しいことをしていたとしても同じようなことが当然起こるのである。

このような状況を打破するためには、新しい概念が必要となる。それを我々はピュア-パッシブと呼んでいる。これは結果として得た値動きの分布を認識し、それをベースに戦略を組み、または評価することを受け入れるのである。そうすることで正しい行動をしていてもそれを間違いであると思われることも無いし、過大評価、過小評価されることも無くなる。

ピュア-パッシブダイナミック戦略

上述の議論をダイナミックなオプション複製戦略にもあてはめることができる。なぜならBSモデルは完備な市場を前提にしているからである。もちろん技術的に方程式を解く際には正規分布が便利である、特に値動きの対数が正規分布であると仮定することで最終的な式はきわめて簡単になる。ただし、だから正規分布が必要なのではなくて、最終的な利益が無リスク金利になるという点にあるのである。つまりBSモデルで前提条件のとおりの市場がありその市場で前提条件にあるようにヘッジを行えばその結果として投資家は無リスク金利が得られるのである。これはまさしくパッシブの原点である。

値動き、または値動きの対数を正規分布としたオプション複製モデルを実際の市場で使うとどのような結果になるのだろうか。実際の市場の値動きはファットテイルを持っている。ただし、その詳しい性質はまだ分かっていない。分布の中央部分が正規分布に近いのか、それとも正規分布よりも細くて山が高いのか、明確にはなっていないのである。ただし、大きく下落する確率と大きく上昇する確率は正規分布よりも大きいことは分かっている。そのために、実際の運用にBSモデルを用いると極端に成績がよい場合と悪い場合が出てくるのである。実際の市場では価格は昨日の価格の動きと同じような動きを繰り返す性質があるのである。価格は上昇し始めるとしばらくの間上昇し、下落し始めるとしばらくの間下落し、昨日下落し、今日上昇するとこのような上下動をしばらく続けるのである。このような性質をモデルの中に組みこむことは現時点ではできていない。そのため多くの実務家はBSモデルの5つのパラメーターのうち行使価格、満期、ボラティリティ-を独自の方法で調整、最適化することで良い成績を上げようと努力、またはBSモデルの欠点を補おうと努力している。そこには予測の要素が当然存在し、すでにパッシブのエッセンスは消えてしまう。

実際の市場は

1.ボラティリティ-は一定ではない。

2.値動きの分布は正規分布ではなく、ファットテイルを持っている。

この2つはBSモデルを持ちたオプション複製費用の見積もりに大きく影響する。ファットテイルの原因とされている正の自己相関(トレンドの形成)と負の自己相関(レンジ相場の形成)は問題を非常に複雑にする。トレンドの形成は利益をもたらしそうだが、中途半端なトレンドは費用となりこれを事前に判断することは難しい。レンジ相場もそのレンジ相場の中でどのような値動きをするかによって費用にもなり収益機会にもなる。一般にレンジ相場が長くなるとオプション複製費用は高くなり、トレンドを形成すると費用は安くなる。ただし、時々刻々と変化するボラティリティ-の影響を考えるとこれもまた常に正しいわけではない。このような手詰まりの状況で唯一の解決策は正の自己相関の利用方法と負の自己相関の利用方法を明確にし、それをモデルに織り込むことで、収益機会となる場合と費用になる場合を明らかにし極力曖昧なところを消し去るのである。これが数式として表せるのであればそれにより得られる収益機会と費用は万人に共通のものであり、それがピュア-パッシブの根本概念となる。

実はこれは現状のインデックス買い持ちのパッシブ戦略と同じことなのである。インデックスの買い持ち戦略では、市場が十分に効率的でないために、均衡価格でインデックスが取引されることはない。インデックスは経済要因、需給関係などにより計算できる理論的水準では決して均衡していないのである。そのために、常に実際の取引価格は均衡価格からは乖離し、経済的には非効率的な価格形成の基に取引され、それが標準となっているのである。ダイナミック戦略にもこのような非効率性を受け入れようというのがピュア-パッシブのひとつの目的である。

ただし、インデックスの買い持ち戦略とは明らかに異なる点もある。それは市場を分析し市場の状況を十分に把握し、最も適した方法論を常に展開しているということである。このような努力は将来新しい金融理論の発展に必ず貢献するはずである。一方インデックスの買い持ちに徹した戦略では、市場を分析する必要が無く、市場に対する影響は投資家が単にインデックスを持つことだけに興味があるというメッセージをインデックスを構成する株式会社に送っているだけである。この場合、インデックスを構成する企業側としては株価を押し上げるような努力をする必要が無く、市場の平均価格を押し下げてしまうという負の効果が伴う可能性があるのである。

Copyright 2003 Quasars22 all right reserved